裁判所では器械式の速記がずっと採用されてきましたが、ここでも新規の速記者(裁判所の場合は「速記官」といいます)の養成が、もう随分前にストップされたままです。
かつては全国で800人ぐらいいた速記官も今は200人台になってしまったということで、大変な事態になっているのですが、不思議なことに余りニュースになりません。
速記官の人員が減った分、それまでその減らされた速記官たちが担っていた仕事は、録音で民間委託(いわゆるテープ起こし)されているようですが、個人情報満載の裁判記録が(しかもその生のやりとりを録音したものが)裁判所の外に出るということことに、私は非常に抵抗があります。
さらに、日本語というのは、たった一語の違いで発言の趣旨が大きく変わってしまうこともよくあるわけです。消え入るような声で証人が話した声がちゃんと録音に明瞭に記録されていればまだいいですが、本当に大丈夫なんでしょうか。人の人生を左右する裁判の記録なのですから、安易に外部委託せず、しっかり自前で対応できる体制をつくらなきゃならないと思うのですが、幹部の方にはお金の面しか見えないのでしょうかね。
また、我々もいつ関わることになるかわからない裁判員制度では、審理の過程では初めから文字の記録は余り重要視していないということで、それはそれで私にはよく理解できません。「記録を読み返してじっくりと……」というようなことは許されないということなんでしょうか。