松本清張さんが速記者を雇って口述速記で多くの作品をつくったというのは有名な話ですね。そういう経験があるからか、この作品にはそんな速記との付き合いが長い筆者ならではの描写があちこちに出てきます。中盤から話の中心的存在になる人物も、実は口述速記者を雇っている設定になっていますし。
この作品も、たしか映画化されたはずです。内容は政治絡みの複雑な話ですが、速記文字が重要な鍵を握る設定になっています。方式が「熊崎式」というのは何ともマニアックな気もしますが、それを中根式の速記者が解読していくという展開になっています。
結末は……書くわけにはいきませんね。御自分でお確かめください。