速記が速く書ける理由は、「〒」のように簡単な線で構成されているからです。
しかし、「〒」のような記号をあれこれ考えても、それだけでどんな言葉にも対応できるほど、たくさんの記号をつくるのは不可能です。それを実現するには、平仮名や片仮名のように、それだけで全ての言葉を書き表せるものが必要になります。
速記は、大きく分けて2つの体系で成り立っています。1つが「基本文字」と呼ばれるもので、通常の文字でいうと平仮名や片仮名といった、いわゆる表音文字です。「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」と、それぞれ1音ずつ対応する文字が用意されています。
この基本文字は、単体でももちろん使えますが、続けて書けるというのも大きな特徴です。行書や草書で続け書きをするような感じで、すべての文字を続けて書くことができます。続けて書ければ、文字と文字との間をペン先が移動する(つまり何も書かない)時間が省略できるわけです。塵も積もれば何とやらで、このわずかな時間の省略が、全体としては大きな意味を持ってきます。
「顔」という文字は、漢字で書くと18画です。片仮名で書けば5画です。それが速記では2画になります。しかも、「カ」と「オ」は続けて書けますので、ほとんど1画で書けるような感覚になります。
この基本文字だけでも、十分練習をすれば検定4級(分速180字)程度は書けるようになります。普通の文字で50〜80字ぐらいですから、2〜3倍速く書けるということですね。